霧笛

マーティン28

2020年04月03日 19:50

ボォーーーーーーーーー。

「シャッター押してもらえませんか?」











































シールドの隙間から入ってくる風が変わった。

草木の匂いの中に、微かな潮の香。

少し気温も下がっている。

パイロット国道の終点から左折、

小さな集落をいくつか抜けて、

北海道最東の街、根室。

そして、最東端 納沙布を目指す。

どうして人は、いわゆる先端が好きなのだろうか?

バイクの鼓動と動脈がシンクロ。

近づくとともに、スロットルを緩める。

昂る気持ちを抑えるように。

早く行きたいのに、わざとゆっくり。

緊張の鎮静。 ふぅっと息をつく。

霧が濃くなってきた。

左手の袖で、シールドを拭く。

ボォーーーー。 ボォーーーー。

霧笛は、私を歓迎しているのか。















霧笛が鳴り響く、本土最東端納沙布岬 碑の前。

何台か止まっているバイクの隙間に、割り込む。

ここは、国境?

何も見えぬ海の先に、あると思われる島。

我が国のものと主張しているが、、、、、。

白い霧によって、有耶無耶にされている感じ。

私がここに来たのは、それ を見に来たのではなく、

最果てを感じる為に来たのである。

何も見えなくても、達成感はある。

一種、山登りと似ているのかもしれない。





「どちらからですか?」

「今日はこれからどこへ?」

ライダー同士は、普段はピース✌サインとともに、

すれ違うだけであるが、

降りてしまえば、

何故だか仲間意識が芽生える。

「そこのキャンプ場なら、私も行く予定なので、

ご一緒しませんか?」

初対面でも不思議と、昔からの知り合いの様に、

話が弾む。

一期一会。

また会うことはないであろう人達と、

一夜限りの宴を楽しもう。

明日になれば、それぞれ別の目的地がある。





以上、1988年 晩夏。
北海道一周ソロツーリングの出来事。



では、また。






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